やってみる演劇【俳優編】現場レポート①

 「何か始めてみたい人のための体験講座」と銘打って、茨木クリエイトセンターで行われたワークショップ(全4回)が終わりました。合同会社stampの主催事業(共催:公益財団法人茨木市文化振興財団)としてかなりの責任感を持って臨んだのですが、結果的に本当に素敵な時間となってホッと胸をなで下ろしています。参加者のみなさんと共催いただいた財団さんへの感謝の気持ちでいっぱいです。

 第一回(9月22日)は緊張の中、始まった。
 外は土砂降りの雨。秋の気配も強く漂い始めた肌寒い気候が緊張感に拍車をかける。私自身かなり緊張していたのだけれど、少しでもほぐそうと始まる前からみなさんに話しかける。参加者が子供の場合はこちらの質問に対して単語で答えが返ってくるだけなのだが(それがまたかわいいのだが)、大人たる今回の参加者のみなさんはどんどん会話を紡いでくださる。さすがのコミュニケーション力!

 導入のお話だけして、すぐに「人間知恵の輪」でお互いに関わり合っていく。自己紹介からゆっくり助走していくのもいいけど、私は腰が重くなるのを嫌って、まず立つ。そしてフィジカルから入っていく。自然と会話が生まれ、相手を視認し、接触を試みる。少しずつ場が緩んでいく。「握手回し」をしながらの「自己紹介」や「立ち座り」、「ビンバンボイン」などゲームを通して、楽しみながら俳優に必要な感覚を疑似体験していただく。マルチタスクに苦しみ、刺激に対するレスポンスに驚くことでどんどん笑顔の輪が広がっていく。必然、成功することは目指すがそれが全てじゃないこと、失敗は挑戦の先にあること、失敗するとみんなが笑ってくれて場の空気が極めてよくなること(失敗はギフトであること)を感じていく。それがみなさんのコメントとなって現れる。

 「フリートーク」。4〜5人が一組になってただトークを楽しんでいただく。
 最初の組は「ハロウィン」について。ジャーマンヘヴィメタルの「Helloween」ではなく、イベントの「Halloween」についてであることは言うまでもない。お互いの経験や知識に基づいた所感を交互に話しながら、相手の意見に立ち入っていったりのクロストークに発展し、とても面白かった。ポイントは「観ている人」がいること。ただ話しているだけなのに、これだけで一つ演劇が立ち上がりそうになる。
 次の組は、「信号無視」について。誰もいない見晴らしのいい交差点を歩いていて信号無視をするか否か。ルールとマナー、モラルなどが関わってくるので少し発言に責任が出てくる。ここはドキュメンタリーの面白いところ。しかしディベートにして、相手の意見に納得したら鞍替えするというルールを付け足すと、さっきまでの淡々とした会話が少し熱を帯び、これもある意味の演劇性を付与される。
 次は、同じ「信号無視」の話を「立場を入れ替えて」行った。信号無視する人は「しない人」として、しない人は「する人」の立場で話す。飄々と話す人、話せなくなり黙る人、ルールの抜け道を探す人、それぞれの対応が興味深い。役というペルソナを被る演劇性を疑似体験。それぞれの対応がそれぞれの役作りの原型なのかな? とほくそ笑む。
 最後は、「時限爆弾」。紙に「赤い線」と「青い線」を書いて、ハサミと共に渡す。間違った線を切れば爆発します、と伝え、観ている人だけに「切れば爆発する方の線の色」をお伝えする。で、ヨーイスタート。演劇をやったことのない人たちがその設定を受け入れて、どんどんお芝居を始める。爆発の緊張感。60秒という時間制限がその緊張を助長する。発話が変わる。笑いも生まれる。それぞれの経験の中からどっちを切るべきかのディベートも始まる。喧嘩も始まる。結果的に「青い線」を切った彼らは激しく「爆死」したのだけれど、素晴らしい「見世物」だった。実際に「線を切る」というアトラクション感も楽しんでいただけた要因かな、と感じる。

 ワークが終わると雨も上がっていた。雨の中 緊張と共に始まったワークショップも、終わってみると柔らかい空気に包まれていた。みんな笑顔だった。来週が楽しみだ、なんて思っていた。

高杉征司