サファリ・P」カテゴリーアーカイブ

高杉と往く「財産没収」2018 稽古の旅①

 財産没収の稽古がすっかり始まっている。再々演ということは三度目のお披露目となるのだからすんなり進行するのかと思えばそうでもなく、やはり産みの苦しみに直面している。作品を創るというのはつまりそういうことなのだ。

 三年前、初めてこの作品に取り組んだときは本当に往生した。ひと月半、期間は短いけれど、毎日朝から晩まで稽古場に缶詰状態で「あーでもない、こーでもない」と知恵も身体もひねり続けた。上手くいっていると思っても辻褄が合わなくなったり、気がつけば何を目指していたのか分からなくなり迷宮を彷徨い歩く日々。そんな苦労の甲斐あって、それなりの手応えを持って利賀演劇人コンクール2015に参加し、優秀演出家賞一席をいただいた。と、そこまでは良かったが、2017年夏、せっかくそれなりの評価をいただいた作品なのだから関西でも上演し、地元のお客さんに観ていただこうと再演プロジェクトが始動し、稽古が始まってみると、それはもう何をどうしたらいいのかてんで分からないことになっていた。動画を見て、その通りにやってみるのだけど、なぜ自分がそんなことをしているのか? さっぱり分からない。形だけはなぞれるのだけれど、演技の根拠もそこにいる意味も感情も概ね思い出せない。何度かやれば湧き上がってくるだろうと試みるも、やれどもやれども模倣しているだけの私がいる。中身なんて何もない、形骸化した「死に体」だけがそこにある。

 その原因と思われるのは、「圧倒的な情報量」。本来演劇は「言葉の意味」を伝えることに終始しない。言葉とは反対の心持ちでいるかもしれないし、そう言わざるを得ない状況こそが大切かもしれない。同じ意味でも発話の仕方によって人格や関係性が見えてくる。そんなことが、この豊富な情報こそが演劇の面白さであることに疑いの余地は(あまり)ない。そこへきてこのサファリ版「財産没収」は情報を限定しない豊かさに溢れている。ポエティックと言ってもいい。その女は郡の調査官かと思えばウィリーの姉「アルヴァ」であり、ともすれば作者テネシーの姉「ローズ」でもある。はたまた「姉」という概念そのものとしてフラフラ歩いているようにも見える。その様はギリシャ喜劇をも彷彿とさせる。テネシーだと認められるその男は、時には作中の登場人物ウィリーであり、芸術・創作に苦しんでいるかと思えば、社会との軋轢に苛まれ、姉を憂いたかと思えば、今度は恋人との関係(ジェンダーも含め)に怪気炎を吐く。テネシーの恋人と思しきその男は、ある時は作中の登場人物トムであり、またある時はテネシーに立ちはだかる「社会」そのものであり、創作に手を差し伸べたかと思えば、痴情の果てにテネシーをぶん殴る。人にしたってそんな塩梅なのだけど、そこへきてモノまで加わってくる。テネシーが「財産没収」を記している赤いノートは、作中の赤い凧であり、赤い絹のチョコレートの箱であり、芸術・創作の苦しみ・喜びの権化である。「腐ったバナナってなんだ?」「プレストン先生って誰だよ!?」と、もう触り始めたらキリがない。それらが時に姿・意味を変え、時に重複して、舞台上に降り積もっていく。演出も俳優もそれらのおびただしい情報を精査して、場面ごとにいるものいらないものを峻別していく。当然綺麗に整頓はできないので、その情報の湯船にどっぷり浸かっている感じ。やるたびにイメージが変わる。やっている人間からしてそうなのだから、観ている人は尚更だろう。そんな「概念」と「存在」の「ゆらぎ」「不確かさ」「重複」を出来るだけシンプルに料理する。焼き魚は塩で喰らうのが一番うまい。まあ・・・これは個人的嗜好だ。

 そして今回、やはり同じ現象を楽しんでいる。前回同様に立ち上げてみて、それが形骸化していようがひとまず立ち上げて、不具合も新たな可能性もみんなひとまとめに探っていく。出演者は3人中2人が代わった。そりゃ苦労だってひとしおだ。だけど稽古を重ねるほどに、言葉を紡ぐうちに、パフォーマーの立ち方も変わってくる。作品の密度も詰まってゆく。字義通り「無限の可能性」を感じる。嗚呼、私はこんなことが楽しくて演劇に邁進しているんだった。そんなことを思い出させてくれるこの作品。再演すればするほどに、面白く、分かりやすく、刺激的になっている。掘る作業は苦しいけれど、掘れば掘るだけ水が湧く。作中で、創作に苦しみ、創作に歓喜するテネシー・ウィリアムズの姿は、まさに稽古場で苦悩し、悦んでいる私たち自身の姿なのだ。

サファリ・P 第4回公演「財産没収」チケット発売開始!

サファリ・P旗揚げのキッカケとなった作品「財産没収」。
初演は2015年7月、利賀山房(富山)にて上演。利賀演劇人コンクール2015に参加し、優秀演出家賞一席を受賞しました。
再演は2017年7月、アトリエ劇研(京都)にて上演。利賀で審査員の方々からいただいた課題に取り組み、大幅に改定しました。より深く、より面白く、より分かりやすくなったと自負しております。
そして今回の再再演。開催都市は愛媛・沖縄・東京・京都(試演会)。レパートリー作品として、たくさんの地域の方に観ていただけるのを楽しみにしています。キャストも高杉征司・達矢・佐々木ヤス子という面々で、装いも新たにお届けします。

本日10月1日、いよいよチケット発売開始です!
みなさまのご来場を心よりお待ち申し上げます!

公演詳細・ご予約はこちら

リピート割引のお知らせ【財産没収】

多くのお客様に、もう一度見たい、とおっしゃっていただきましたので、急遽、リピート割引を設定いたしました。

8月20日(日)11:00、15:00

どちらの回も、二回目の観劇のお客様は1500円でご覧頂けます。(u25は変わらず1000円です)

予約は不要。受付にて「リピート割引希望」の旨と「お名前、1度目の観劇日時」をおしらせくださいませ。皆様のご来場をここよりお待ち申し上げております!

財産没収2017.08.12.13

さて、今日は14日。劇場入りしております。今日は12日と13日の稽古を記録しておきます。両日ともサファリのメンバー、達矢さんが、13日は音響のキョロちゃんが来てくれました。

まとめて書いてしまいますが、この2日間で、改めて、大きく、この芝居ってなんなのか、考えることになりました。高杉氏の提案です。私は逆に、小さな細い修正点が思った以上に出てきて、これはどうしたものか、と思っていました。

話しながら、まっちゃんという存在が、曖昧だったことに気がつきます。高杉氏はテネシー、えみちゃんはテネシーの姉。いずれも誰であるのかはっきりしていました。しかし、まっちゃんだけは「恋人」という非常に曖昧な存在。いわゆる象徴的な存在だったのです。

だから、どうしたって対象でしかなく、主体的なセリフや動きが出てこないのです。まっちゃん自身はもちろん人間ですから、彼が彼なりに通す筋というものはあるのですが、この芝居の中で、彼を捉えられていないことに気がつきます。

でも、「恋人」と言っても、具体的に誰かわかるものだろうか。欲望という名の電車のミッチやスタンリー。ガラスの動物園のジム。あるいはテネシーのリアルな恋人。でもどれも、この作品にとってはメタファーでしかなく、名も無き存在です。

メタファー。

もしかしたら、この男は、テネシーの、社会性の部分なのではないか。と思いつきます。高杉氏演じるテネシーがアーティストの部分だとしたら、まっちゃん演じるテネシーは、それを制御しようとする部分。堕ちていく彼を必死で引き戻そうとする役。

そうやって整理したところ、まっちゃんが、言いやすくなったセリフがいくつか出てきたそうです。高杉氏も「セックス」は「自分を一本化しようとする動き。お互いの部分を受け入れようとする動き」なんだなと言います。えみちゃんとまっちゃんが出会うのはやはり、姉と弟としてなのです。

そうやって3人が3人とも、ハッキリとして姓名を持つ個人であることがわかり、また一つ、この作品の筋が通りました。

それから、いくつかまだ残っていた「なんとなくセリフを割り振った部分」を正しく振り分けたり、新たに加わったダンスの部分のきっかけを合わせたりしました。

いよいよ小屋入りです。稽古場の解体を、サファリの達矢さんが手伝ってくれました。

 

財産没収稽古2017.08.11

この日も通し動画を見ての稽古です。舞台監督の浜村さんと照明の池辺さん、お二人の子供、かよこが稽古場に来てくれました。稽古場には、下野くんがすでに買ってくれていた「ランタン」が届いていました。この「ランタン」を持って、恵美ちゃんはお散歩するのですが、これ、もともと下野くんの持ち物で、アンティークな顔をしたまさにランタンでやってたのですが、夏目氏のアイディアででかい電球になりました。一気にその部分だけ「近未来感」が出てきます。実際に電気をつけ、歩いてもらうと、メタファー的なものは満載だと思っていたんだけど、LEDでとても冷たい明るさが目立ち、相殺されて落ち着きました。

「メタファー」というのがいかに取扱注意なものか、今回学びました。いろんなところでそれが顔を出して、面白いです。

さて、通しを見た演者からは、ダンスのシーン、目線の問題などが挙げられます。一つ一つ解決をして、通しを。

この中で一番の変更は、松本氏と恵美ちゃんの出会いの場所についてです。もともとは真ん中の一番良いところで出会っていた二人。悪くないのですが、そのために歩くスピードを調整してもらったり、センターといういわゆる王道のポジションを疑わずに採用していることに、はたと気がつきます。やはり選択は「悪くない」ではなく「それ以外ない」で選びたいもの。

歩くスピードに無理がなく、照明的にもエッジを立てやすそうな、右手の一番奥のあたりで出会ってもらうことにしました。実際やってみると、高杉氏がお酒を飲んでいるのがセンターなので、とてもかっこいい配置になりました。

写真はまだパソコンに届かないので、また今度アップします。お盆なので、もともと関西で現在は別の地在住の方は是非、里帰りついでに観劇していただきたいものです。劇研、もう閉まりますので。

財産没収2017.0808

この日の課題は4つありました。どれも、シーンとして少し気になる箇所です。それが、一つ解決すると他も解決する、という状況になってきました。さらに、今日は解決をつけるつもりがなかったところ、つまりラストシーンまで改善されました。

ラストは再び恵美ちゃんが、「外」をぐるぐる回るという終わり方をしたいと私は思っていました、しかし先日照明の池辺さんにそれがわからない、と言われたところ。そこはそのままに、

恵美ちゃんが「じゃあ、帰るわ」というセリフの扱いについて問題提起をしてくれたので、それを解決しようとした結果、私が挙げたパターンの中で、高杉氏が支持したのが、恵美ちゃんは外をぐるぐる回らない、という終わり方でした。

実際に通しでやってみると、それがとても、しっくりきました。オープニングとの相性が良いというのでしょうか。筋がすっきり通る必要はないのですが、まさに、相性が良いという感じでした。

この日は衣装の詩恵ちゃんが来てくれたので、それを着て稽古と通しをしました。見栄えは良いので、あとは動きに合わせて少しずつマイナーチェンジをしてもらいます。また、当初イメージしていたものと少し違うシルエットのものは改善されることになりました。

財産没収稽古2017.08.06

5日の稽古で、恵美ちゃんのセリフと動きが飛躍的に良くなっていたことに驚き、その日の通しで、高杉氏の俳優としての力量をまざまざと見せつけられ、6日の通しで、まっちゃんがそれに食らいつく様子を見ることができました。

こんなに、こんなに、それぞれが自立して、自分のペースで役を育てていく、自分を訓練していく、準備を怠らないメンバーと、芝居を創ることができる私は、すごいです。

さて、この日は、ほぼ作品の骨格と肉付けが終了したということで、細かく気になる点を洗っていくことになりました。椅子の数、トルソーの位置が変化したことによる立ち位置の問題、それからいくつか、小さなセリフと設定の齟齬。しかしそれも、ラストのダンスのところの曲の掛け方とダンスの内容を吟味し、口頭で幾つか演者同士で打ち合わせをしてもらって、通しをしたら、ほぼ、消えていました。

局部的な問題というのは実は少なく、すべてが影響し合っているものです。どこかがよくなると他もよくなってきます。そうやってすべてが少しずつ、よくなっていきます。反対に、問題の箇所を放置しておくと、全体的にもいつまでもよくならない。過去を振り返るとそれがわかります。

通しを、照明の池辺さんに観てもらいました。内と外、について、解釈しにくいとのこと。私の中でこの「内と外」は非常に整理されているのですが、改めてこの質問で、言葉にする機会をもらいました。

池辺さんが帰った後、改めて演者の方から、幾つかきになる点をピックアップしてもらいます。これらも、いずれも小さなことばかりなので、次の稽古で当たりましょう、ということになりました。ここからは演者たちがそれぞれの動きやセリフの制度を上げていく時間です。

俄然、本番が楽しみになってきました。

写真はいつかの稽古。

財産没収稽古2017.08.05

今日は、稽古場に朴さんと里井さんが来てくださいました。昨日の通しを経て、前半について改善点をピックアップしてゆきます。最大のポイントは高杉氏から。つまりいつ、高杉氏は恵美ちゃんと出会うのか、ということ。

松本氏が恵美ちゃんと出会うシーンはここまででしっかりと作ることができています。でも恵美ちゃんは高杉松本両氏からすると、高杉氏の妄想です。

妄想の人物と出会うとはどういうことなのか。

というわけで今までなんとなく出会ってしまっていたp3のシーンを、出会わないように立ち位置、目線などで工夫し、出会わないというふうに作り変えました。あくまで恵美ちゃんは終盤まで、高杉氏の心の中で喋っています。こうすることで高杉氏の恵美ちゃんとの距離がはっきりしただけでなく、松本氏が途中、恵美ちゃんに気づき、怯える様子までもがくっきり。すごく見やすくなりました。

あとは、恵美ちゃんに主役が移ってからのこと。どうしてもテネシー目線で物語ってしまっている箇所を、なんとか姉目線に変えられないものかと考えます。そこで、この辺りで恋人との関係性を変化させてみようと提案。そうすることで姉が変化し、それをテネシーが見てさらに変化する構図が描けました。

いざ、通し。ランタイムはいつも通りでしたが、とても良い出来でした。もっと間を取れるな、とみんなが思っている状態。いい感じです。明日以降、この通しを経て間をとったり、違和感を減らしていく作業に入れそうです。

稽古終わりにドラマツルグ的に動いてくれている朴さんが、パンフレットの内容を作りたいと提案してくれます。そこに、デザインをしている里井さんが乗ってくれて、なんと、お二人にパンフレットを作っていただくことになりました!ありがたい!

 

稽古が終わった後もしばらく、パンフレットの話から様々な情報交換や自己紹介をしました。山口的には財産没収の新しい景色を見てしまい、本当に、色々と感動した稽古になりました。

 

財産没収稽古2017.08.04

この日は美術の夏目さんと照明の池辺さんが来てくれました。お二人は前日の舞台美術ミーティングを経ての参加です。

まずは山口が「前半」と決めたところまでを通してみます。全体的に細かいお願い事を各演者にしてゆきます。発語のことから大きなコンセプトに関わることまで様々です。でもその時、トルソーの位置を少し上手にずらしたい、ということを演者に伝え忘れます。

スタートする直前に、夏目さんから「トルソーをずらしてほしい」と要望あり。ああ、そうでしたとずらし、そのまま通すと・・・案の定、たくさんの変更が加わり、混乱。

前もっていっておくべきでした。ごめんなさい。

でも見た目的には、中央にあるよりぐっと、よくなったと私は思いました。この後、前半についてもう一度みんなで細かい修正を加えつつ吟味します。そしてp3のとある箇所について停滞してしまいます。セリフの中で「あの大きな黄色い家」のことを話していたと思ったら、それが急に「この場所」のことになる、というズレです。

そのズレ自体はだまし絵的でとても面白いのですが、そこにさらに、「何か外で物音がした」という情報まで加わり、男性二人と女性一人のアクションが全く別空間のものになります。見ていてとても混乱するのですが、それをどうすれば整理するのか、あるいはわざと破綻させるのか。

考えても解決せず、通しをせねばならない時間に。それでもなんとか美術についてさらに話し合いをしました。テープをはる位置。はる意味。いつからはってあるのか。そしてランタンの役割について夏目氏から提案が。ランタンが光るか消えるかで、外と内を分けてはどうか。なるほど、です。

だいぶ時間が押した状態で、通します。大きな問題がだいぶ解決したものの、まだすっきりしない感じ。加えて細かい修正をたくさんしたい。段取り力が求められているような気がします・・・。